私たちは、卒後5年目までの臨床経験が、その後の臨床能力に大きな影響をもつと考えています。神経内科は、内科の分野の中でももっとも古典的な色彩の強い分野で、主訴・病歴から3,4の鑑別診断を念頭に置いたうえで、病歴を要領よく聞き出し、さらに鑑別診断を絞って、「神経学的所見としては、○○が予想される」と思って、神経学的な所見をとり、それを確かめる、という手順を取ります。こうした思考過程Gedankengangをきちんと身につけることはneurologistに限らずphysicianには要求されることですので、当院では特にこの点を重視して、教育にあたっています。レジデント回診では、「なぜ、そう考えるのか、なぜその検査が必要か」を議論するようにしています。
歩きにくい、字が書きにくいといった主訴と病歴を理論的に整理しながら疾患予想を立てる。次に、わずかな診察道具を用いて系統的にとった神経学的所見から臨床診断にたどり着く。さらに、神経画像検査等でそれを裏付ける。その華麗(!?)な作業の後に、治療を開始します。近年、神経変性疾患の病態理解が急速に進歩するとともに<治療法のない難病>といった古典的概念は徐々に払拭されつつあります。特に、変性疾患の中で最も頻度の高いパーキンソン病に対する内科的治療の進歩は著しく、作用機序の異なる各種薬剤を患者様の病状に合わせてうまく調整し、病態にもとづいた生活指導を併用することで、一般人口と遜色ない寿命が得られるまでになりました。そのため、疾患を初期よりライフスパンで捉え、できるだけ長く不自由のない社会生活を送っていただけるような治療を心がける必要があります。そのようなノウハウを学びながら一緒に働きませんか?
わが国では急速に高齢化社会が進行し、認知症の患者数は増加の一途を辿っており、認知症性疾患の診療における神経内科医が果たす役割の重要性が増してきています。京都府も例外ではなく、宇多野病院に設置された物忘れ専門外来には数多くの受診があります。近年、認知症の診断は画像診断や生化学的診断などの進歩によって的確に行えるようになってきています。宇多野病院では神経学的診察、臨床心理士による神経心理学的検査、MRI やSPECT などの画像解析を用いて、総合的に評価しアルツハイマー型認知症、前頭側頭型認知症、レビー小体型認知症などの診断を行っています。これらの診察、検査手順から治療、介護プランまでを系統的に習得するとともに、認知症性疾患特にアルツハイマー病の病態を分子レベルでの理解することによって、臨床で得た経験を研究に生かせるようなリサーチマインドも兼ね備えた神経内科医を育成したいと考えています。
神経内科における電気生理検査は、ハンマーのごときものです。神経学的所見により部位診断しますが、それを検証する手段です。診断が正確かつ迅速になります。
また治療の経過を追う上での客観的指標になります。
基本は3種類の検査です。
神経伝導検査:末梢神経障害の有無、障害が脱髄性か軸索性かの鑑別に使います。
誘発電位:中枢のどの経路に異常があるかを調べます。
針筋電図:下位運動神経における軸索障害をみつけ、レベル診断します。
電気生理は診断だけではなく、治療にも使われます。たとえば経頭蓋磁気刺激は変性疾患の治療に、針筋電図は不随意運動に対するボツリヌス治療に使われます。
電気生理外来では、まず神経学的所見をとり、部位診断にあわせて検査内容を決めます。そして実際に自分で検査します。最終的には検査所見をつけ、今後の方針を示して報告書作成を終えます。指導医はこれら一連のプロセスを一緒に検査しながら指導していきます。当院ではこのような電気生理検査の基本と応用を習得し、実戦を身につけ、そこから神経内科疾患の理解をより深いものにしていくことを目標にします。
大半のてんかん患者さんは、投薬治療で通常の社会生活を営めますが、年単位の服薬が必要ですから、初期診断が非常に重要です。また、一見投薬コントロールが良好な患者さんでも、生活の上で様々な点に留意しながら投薬調整をする必要があります。難治てんかんの患者さんでは診断を定期的に見直し、外科治療も念頭に置いて、正しい病状把握をしなくてはなりません。発作科研修では、適切に診断と治療を行うための基礎知識を習得し、自力で治療方針を決定できることを到達目標としています。外来では問診から検査の解釈、説明と合意までのプロセスを経験できます。病棟では長時間ビデオ脳波モニターを中心とした特殊検査や、細かい薬物調整の方法などを学んでいただけます。また、てんかん診療や脳波解析を中心とした臨床研究、新薬の導入に際する臨床治験や市販後調査も行っています。
神経内科専修医として、宇多野病院で3年間勉強させて頂きました。そのうち3ヶ月間は、国立循環器病センターで研修を行いました。この3年間で、変性疾患、脳血管障害、免疫疾患、筋疾患、小児神経科、てんかんと、幅広い神経内科疾患を全て網羅できるほどの、豊富な症例を経験することができました。長いようで、あっという間だった気がします。
全ての先生方が教育熱心で、神経学的所見の取り方から始まり、脳波所見のつけ方、神経伝導検査、針筋電図検査などを基礎からみっちりと時間をかけて教えていただきました。
また臨床だけではなく、多くの症例から気づいた点について深く考察し、新たな知見を得るための研究手法についての指導をいただき、学会、論文発表も数多く経験させていだだきました。また、同じ専修医として働く若い先生も多く、気軽にわからないことを聞くことができる環境であったのも、僕にとっては本当に幸運なことでした。
神経内科を勉強したい人にとっては、まさに天国のような場所だなあと思いました。宇多野病院に残ってさらに勉強したいと思い、その結果、専修医を終えた現在もクリニカルリサーチフェローとして働かせていただいております。この専修医としての3年間の経験は、自分のこれからの人生にとっても本当に貴重なものになりました。今後も、広く活躍できるような医師になるべく研鑽を積みたいと思います。
他院で2年間の初期研修を終え、3年目から神経内科専修医として、宇多野病院で3年間勉強させて頂きました。宇多野病院は総合病院ではなく、消化器科や(研修当時は)循環器科などの常勤医がいないということもあり、宇多野病院に来るまでは初期研修で得た知識で消化器疾患や心疾患などを抱えた患者さんに適切に対応できるかという不安もありましたが、同年代の先生が大勢いて、気軽に分からないことを聞くことができたり、何も言わなくても助けてくれる上司や同僚がいることで、その不安はすぐに払拭されました。また、フットワークの軽い看護師や技師が数多くいて、病棟も非常に働きやすい雰囲気です。神経内科の研修については言うまでもなく、教科書でしか見たことのないような症例を数多く経験することができました。また、他の専修医が大勢いることで、自分一人では到底経験できないような症例数を診ることができます。回診では患者さん一人一人を丁寧に診察してくださり、自分の所見の取り方で間違っているところや不足しているところを一つ一つ修正することができました。回診以外でも質問をすればすぐにベッドサイドまで来て、診察をしていただき、診断や治療を筋道だって教えていただくことができました。
他院では、若い医師が他におらず、上司も忙しくて聞きたいこともなかなか聞けないというようなことをよく耳にする一方で、宇多野病院では、教育熱心で診療の手本を示してくださる上司や、同じように悩みながらお互い協力し合って頑張っている専修医が数多くいることで、3年間モチベーションを維持しながら研修することができました。
宇多野病院では臨床が充実しているだけではなく、多くの臨床研究が行われており、3年間の研修の中で触れさせていただくことができました。研究内容は、解決されれば、患者さんに直接役に立つことばかりなので、その内容をそのまま普段の臨床にも活かすことができます。また、自分で疑問に思っていることや提案したことがそのまま研究テーマとして採用されることもあり、研究を非常に身近なものとして感じることができました。
臨床についてまだまだ勉強したいという思いと、臨床と研究を両立していきたいという思いがあり、専修医を終えた現在もクリニカルリサーチフェローとして働かせていただいています。この専修医としての3年間の経験は、神経内科医として正しい物の考え方を身につける上で非常に貴重なもので、初期研修を終えてすぐに勉強させていただけてよかったと思います。今後も、臨床、研究とも充実して行っていきたいと思います。